『若者の人間力を高めない非国民宣言』2005年10月26日
経営者たちの圧力団体である日経連の会長、奥田碩を議長とし、厚生労働省が主催する「若者の人間力を高めるための国民会議」は先月9月15日、「若者の人間力を高めるための国民宣言」なるものを発表した。直接的には2003年の「若者自立・挑戦プラン」を契機とするこの宣言のなかには、「意欲」や「力」という言葉があふれている。やれ、「子供のころから人生を考える力やコミュニケーション能力を高める」、やれ、「意欲ある若者にチャンスを与え」、やれ、「若者が自ら能力向上に励むことのできる環境を」うんぬん。
まるで働かないことがこの世の極悪であるかのような脅迫にさらされた、なんとしても若者を働かせようという労働中心主義ともいえる執念めいたこの文言に、我々はうす気味の悪さを感じざるを得ない。ある種の無気力や働けないことが排除され、ただ生きることが徹底的に貶められる。
そこには、90年代半ばから資本の要請によりなされた雇用の流動化の結果もたらされた構造的な我々若年層の雇用問題を、個人のやる気だとか意欲の問題としてすり替える醜悪な詐術が見え透いている。さらには、ここで宣言されている働く意欲を掻き立てようとする文言の裏面として、社会構造的にもたらされたフリーターや野宿者、それにニートと呼ばれる人たちを働く意欲をもてない者」として規定し差別・抑圧する思想があるのだ、と我々は明確に指摘しなければならない。
そして今日、この運動の一環として「若者自身」を参加させ、とりこむ形で「若者トークセッション2005」というイベントが開催される。このイベントを主催する彼ら経営者や政府が、やる気のない者の仕事とするアルバイトなどの非正規労働は、まさに彼らの利益のために作り出されてきたし、これからも増えていく傾向にある。彼らは決してそういうものを「立派な」正規労働者に変えてしまおうとしているのではなく、ただそのままの貶められた状況の中で反省だけをして無理やり生き生きと、がんばって働いてもらうことだけを望んでいるのだ。そうすることで当然彼らの利益も上がるのだから、こんなせこい集まりまで作って頑張るのもうなずける。
しかし、人の生とは労働だけではない。友人と談笑したり、映画を見たり、読書をしたり、音楽を聴いたり、旅行をしたり、恋愛をしたり、生とはもっと豊かなもののはずである。しかし、これらは必ずしも労働の対価としてもたらされるものではない。一部の勤労者に労働のほかに余白のない生を強要される覚えなんてさらさらないのだ。それに、我々フリーターは低賃金ゆえに生活を維持するため長時間労働を強いられている。そんな我々になお働けって言うな!
はっきりしておきたいのは彼らの望みと私たちの望みはまったく別のところにあるということだ。我々が彼らの望むような方法で自分たち自身を「支援」したりすることはないし、そうする中で無為な競争に喜んで入っていくこともない(日々無理やり入らされるとしても)。我々はもっと働くのではなく、もっと自由に生きるために集まる。
ここに我々はこの「若者の人間力を高めるための国民宣言」でいわれる「人間力」が「働く意欲」そのものであることを喝破し、はっきりとこういってやろう。
「大きなお世話だ! 余計なことすんじゃねー!」
PAFF・若者の人間力を高めない非国民運動
いちばん感心したのは、「まるで働かないことがこの世の極悪であるかのような脅迫にさらされた、なんとしても若者を働かせようという労働中心主義ともいえる執念めいたこの文言に、我々はうす気味の悪さを感じざるを得ない。」というくだり。労働運動の世界で、ここまではっきりと言ってしまうのは、まさに革命的だ。
たいがい労働運動って、「わたしたちは働きたい。ちゃんと働きたい。それなのに経営者が悪いから、まともに働けない。あーん、働きたいのにー!」てな感じで、「働きたいオーラ」全開なのよね。まあ、お気持ちは分からんでもないけど、わたしはちょっと違和感を感じてた。誓っていうけど、もし明日1億円拾ったら、わたしはソッコー仕事やめるよ。働きたいからじゃなくて、働かなきゃ食えないから働いてるだけ。できれば働かずに怠けていたい。それがフツーでしょ?
などと考えていたが、このPAFFという団体、かの「だめ連」の不抜の拠点=「あかね」に本部を置いていると知って納得。ぜひ労働運動に革命をおこしてほしい。
だけど、「しかし、人の生とは労働だけではない。友人と談笑したり、映画を見たり、読書をしたり、音楽を聴いたり、旅行をしたり、恋愛をしたり、生とはもっと豊かなもののはずである。」という一節はいただけない。まるで夏休みの過ごし方に干渉してくる小学校の先生みたいだ。「『明るい不登校経験者』が不登校を『代表』して語ることは、必要でもあり、なおかつ罪深き暴力でもあります。」という常野雄次郎さんの鋭い指摘がそのままあてはまる。
ま、何はともあれ、もし1億円落ちていたら労働者Lに直ちにしらせてほしい。
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